スノボをするうえで、ビンディングの知識は重要です。
スノボに足を固定させる大切なビンディングは丈夫な素材で耐久性も考えてつくられていますが、それでもスノボ中に破損してしまう場合もあります。
もし、ゲレンデでそんな事態に陥ってしまったら、どうすればよいのでしょうか?
本記事では、スノボのビンディングについて解説します。ビンディングの基礎知識からスノボ中に壊れたときの対処法、修理方法や手順なども紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね。
ビンディングとは?

ビンディングは「バインディング」とも呼ばれ、スキーやスノボの板に、ブーツを固定する留め具のことを指します。
ドイツ語の「ビンデュンゲン」が語源です。
スノボのビンディングの役割
スノボのビンディングの役割は、ブーツを板に固定し、滑走中にブーツが板から外れることを防ぐことです。
安全に滑るために非常に重要な役割を担っている部分だからこそ、スノボをする際には、ビンディングの状態を事前にチェックしておくことが大切です。
スノボのビンディングの構造

一般的なスノボのビンディングは、ボードに固定するベースプレートとディスク、ハイバック、ヒールカップ(ブーツの踵がおさまる部分)、ストラップなどのパーツからなっています。
ディスクやハイバックは、ビスによって固定位置や角度を変更できます。また、一般的にストラップはつま先(トゥ)と足首(アンクル)の2ヶ所、ラチェットバックルで締め付けを調整可能です。
スキーのビンディングには、転倒時に自動的にスキーブーツを解放するセーフティ機構が備わっていますが、スノボの場合は滑走中にボードが外れてしまうと危険なのでビンディングにセーフティ機能はありません。
ビスやバックルの一部などを除いて、大半が樹脂系素材を使って、温度変化や耐久性を十分に考慮して設計・製造されていますが、経年劣化や管理不備などによって破損が起きる場合もあります。
スノボのビンディングの種類と特徴
スノボのビンディングの主なものには、「ストラップ型」「ステップイン型」「リアエントリー型」の3つがあります。
ここでは、それぞれの種類と特徴について解説します。
<ストラップ型>

「ストラップ型」は、スノボのビンディングでもっとも一般的で、ストラップでつま先と足首部分をブーツに固定するタイプです。
つけ外しには多少の慣れが必要で、つま先(トウ)部分と足首(アンクル)部分を合成樹脂やレザー製のストラップで締め上げて、ラチェットバックルによってしっかりと固定して使用します。
ブーツとビンディングとの間に適度なフレキシブルさがあるため、滑走するときの感覚は良いでしょう。
<ステップイン型>

「ステップイン型」は、ブーツとビンディングの統合システムとして設計されたタイプで、ストラップなどがない代わりにブーツソールとベースプレートをダイレクトに固定できるのが特徴です。
立ったまま踏み込むだけで装着でき、外すときも簡単。その代わり、ストラップ型に比べて価格は高い傾向があります。
<リアエントリー型>

「リアエントリー型」は、大まかな構造はストラップ型と同じです。
大きな違いは、ハイバックを後ろに大きく開くことができ、そこからブーツを入れられる点。
ハイバックを所定の位置までセットすると、同時に甲部分のストラップも締まるので装着が簡単なのがメリットです。
ビンディングが壊れる主なる原因

スノボのビンディングには、プラスチックなどの樹脂系素材が多く使用されています。
これらは外部の温度変化に少なからず影響を受けるほか、経年劣化によって柔軟性が徐々に失われ、強度低下が生じます。この現象を加水分解といいます。
近年の素材は、従来に比べれば格段に耐久性に優れていますが、それでも繰り返しの使用による強度低下を完全に排除することはできません。
スノボは滑走のたびにビンディングの装脱着を繰り返すので、可動部分への負荷もそれだけ大きくなり、破損のリスクが生じやすくなるのです。
予期せぬビンディング故障を防ぐ対策

ビンディングの故障を完全に防ぐことはできませんが、滑走中の予期せぬ故障リスクを減らすためにできる対策はあります。
ここでは、スノボをするならビンディングの故障予防に覚えておきたいポイントを紹介します。
ビンディングの破損しやすい箇所を知っておく
実は、スノボで壊れやすい箇所はおおむね決まっています。
滑走中に負荷がかかる場所、装着や脱着のたびに操作するような以下の部分です。
・ストラップ本体およびストラップを固定するビスまわり
・ハイバック本体およびハイバックをヒールカップに固定するためのビスまわりやロック機構
また、厳密にはビンディングの破損ではありませんが、ベースプレートをボードに固定するためのビス穴が緩くなると、ビンディングとボードがしっかり固定されずに危険です。あわせて覚えておきましょう。
滑走前にビンディングチェックを行う

スノボのビンディングで壊れやすい部分を中心に、滑走前にしっかりチェックしましょう。
スノボのビンディングには、多くのビスが使われています。滑走する前には、これらのビスが緩んでいないかも確認します。ベースプレートのビスだけでなく、ストラップとヒールカップのジョイント部、ハイバックとヒールカップのジョイント部も確実にチェックし、緩んでいたら締めておきましょう。
スノーボーダー向けに開発されたコンパクトな携帯用メンテナンスツールもあります。スノボをするなら持っておくと便利ですよ。
スノボ中にビンディングが壊れたときの対処法

事前にチェックを行っていても、ビンディングの破損が起きてしまうこともあります。
リフトを降りてボードを装着しようとしたらストラップが切れていた、滑走中にストラップごと外れて紛失したなどのトラブルも珍しいことではありません。
そんなとき、どうすれば安全に対処できるのかご紹介します。
まずは安全な場所へ移動!滑っての移動は注意が必要
スノボ中にビンディングが壊れたら、まず安全の確保が重要です。
コースの端などに移動し、ほかのスキーヤーやスノーボーダーとの衝突を避けるようにします。次に、ボードを雪面に刺すなどして目立つようにしましょう。
破損した場所や自分のスノボの技術レベルによっては、そのまま滑って安全な場所へ移動できるケースもあるかもしれませんが、仮に移動できるとしても自己責任として最低限の移動にとどめるべきです。
万が一を考えた安全策を講じることが大切です。
ストラップが壊れたとき
ストラップが破損した場合は、どのストラップかによって対応が若干変わります。
トウストラップが破損した場合は、足首側がしっかりと締まっていればとりあえず滑走することは可能です。ただし、破損したトウストラップがブラブラとぶら下がって雪面に擦れるような場合は危険なので、外してしまった方が安全なケースもあります。
アンクルストラップが破損した場合は、それが前足なのか後ろ足かによって多少の違いがあります。後ろ足のアンクルストラップが破損した場合は、前足メインでのボード操作である程度滑ることができますが、前足の場合はそのままの滑走は難しいため、滑るのは諦めるのが賢明です。
ハイバックが壊れたとき
ハイバックが壊れた場合は、そのままでは危険なのでヒールカップから外しましょう。
その際、バックを固定していたビスやジョイントパーツをなくさないよう注意してください。
中級程度の技術があれば、ハイバックがなくてもある程度の滑走は可能です。安全な速度を保ち、状況判断をしながら安全な場所へ移動しましょう。
予備のハイバックがあればパーツ交換が可能ですが、通常はメーカーに依頼して正規の交換パーツを取り寄せることになります。
ベースプレートが壊れたとき
稀ではありますが、ベースプレートのビスが緩んで滑走中にビンディングがボードから外れるケースもあります。
万が一、このようなトラブルが生じてしまったら、その場での修理は難しいです。
コースサイドの安全な場所まで移動し、パトロールを要請しましょう。
スキー場の救助を呼ぶ
スキー場の救助を呼ぶときには、トラブルの状況や怪我の有無、待機場所などをわかりやすく明確に伝えましょう。
歩いて降りられたとしても、コース内のブーツ移動は望ましくありません。
滑落やほかの滑走者との衝突もあり得るため、パトロールを要請したら特別な指示がない限りはその場での待機が原則です。
ビンディングストラップの修理・交換方法

ビンディングが壊れるケースで、特に多い部分はストラップです。
ここでは、ビンディングストラップの一般的な修理・交換方法について解説します。なお、実際の作業は、やむを得ない場合を除き室内で行なうようにしましょう。
なおストラップは、ラチェットバックルがついているほう(普通は親指側)が破損は通常あまりありません。
実際の修理も難しいので、ここでは小指側のストラップの破損について説明します。(※ラチェットバックルがついている親指側をストラップ、小指側をベルトやバンドと呼び分けることもありますが、ここではストラップで統一します。)
必要な工具と部品
作業する際には、以下を準備します。
・スノボをしっかりと固定できる台
・ドライバー(ビンディングによっては六角レンチなどが必要な場合も)
・リムーバー(クリーニング用)
・ウエス
・軍手
ドライバーは、スノボ用に販売されているラチェット式のものが便利です。なお、ビスのサイズや規格が合っていないものは使用してはいけません。
ビンディングの取り外し方
ストラップやハイバック破損の修理の際は、一般的にはビンディングをボードから外さずに作業できます。ただし、ベースプレートやディスクを固定するビスが壊れた場合は、一度ビンディングをボードから取り外す必要があります。
ビンディングを外す場合は、ボードを平らな台の上に置き、ベースプレートのディスクに固定されているビスを緩めます。このとき、緩める順番を対角線上にして、すべてのビスができるだけ均等に緩むようにするとよいでしょう。
なお、ビスを外す前に自分のスタンスやアングルをメモしておくと、再セッティングの際にスムーズです。
ビンディングストラップの交換手順
ビンディングストラップの一般的な交換手順は以下の通りです。
1.壊れたストラップを取り外す
2.ビンディング本体のストラップがジョイントされていた部分の汚れやゴミなどを拭き取る
3.交換する新しいストラップをビンディングのフレームに固定する
ストラップがビスで固定されている場合は、ジョイント部のビスを緩め、破損したストラップを外す。その際にビスなどのジョイントパーツはなくさないように注意してください。ビスでとまっていないトウストラップなら、下に押し込めば外せます。
また、ビスで固定するタイプはビスを締めて取り付け、ビス不要タイプは押し込んで固定しましょう。
交換後のチェックも忘れずに!
ストラップの交換が終わったら、実際にブーツを装着して締め付け具合や固定力をチェックしましょう。
「しっかりと均一な締め付けができるか?」「特定の部分だけに強いテンションがかかっていないか?」「ラチェットバックルへの装脱着はスムーズにできるか?」などを確認。
部分的に強い圧がかかってしまうようだと、傷みの原因となります。そのような場合は、交換パーツの形状が合っていない可能性もあるため、別のパーツを試してみましょう。
また、瞬間的な力で簡単にバックルが外れないかも確認します。交換パーツのギザギザがラチェットにしっかりと噛み合っていれば簡単に外れてしまうことはありません。
もし、外れてしまうようなら、ラチェットバックルそのものが故障しているかもしれないため、信頼できるショップに修理を依頼するのがおすすめです。
ビンディングを長持ちさせるコツ

ビンディングを長持ちさせるためには、使い方にも気をつけましょう。
ここからは、運搬と保管方法に関する覚えておきたいポイントを紹介します。
ビンディングの運搬方法
ビンディングの上に荷物を乗せてしまうと、故障の原因になります。
また、車のルーフキャリアに乗せて運搬する場合には、ビンディングを剥き出しにせず必ずカバーやケースに入れて埃やゴミの付着を防ぎましょう。
ビンディングの保管方法
ビンディングはビスでボードに固定されているので、取り付けたままにしておくとボードに負荷がかかりやすくなります。
その状態で保管すると、レアケースながらボードに歪みが出ることもあります。
また、ビス穴部分に残った水分で錆びが発生する可能性もあるため、シーズンオフは外して保管しましょう。
まとめ

スノボのビンディングは、性能も耐久性もしっかりした製品が多くなっています。
そのため、正しく使用すれば予期せぬ故障や破損のリスクは少なくはなってはいますが、経年劣化や使い方などの影響で起きるケースはあります。
スノボを思いきり楽しむためにも、ビンディングの基礎知識や壊れたときの対処法、長持ちさせるコツなどを押さえておきましょう。




